お母さんに叱られて、ちょっぴりしょんぼりしてたお父さん。
でもそれじゃダメって思ったのか、僕のお顔を見てこんな事を言い出したんだ。
「酒の事はともかくとして、ルディーンが預かったっていう子たちには一度会っておかないといけないだろうな」
「そうね。ルディーンの親として責任があるもの。それに、そこのたちのこれからの事もあるしね」
僕、まだ子供でしょ?
ニコラさんたちの事を聞いたお父さんとお母さんは、そんな僕の代わりに自分たちが何とかしないとダメって思ったみたい。
だから一度会って、お話しないとなぁって言うんだよね。
「それに、ルディーンが買ったという家の事もあるし」
「そうね。流石に錬金術ギルドのマスターや、あのお爺さんに任せっぱなしと言う訳にもいかないものね」
それに僕が買ったお家もロルフさんたちに任せっぱなしじゃダメだよねって。
だから一度見に行かないとねってお話してたんだけど、それを聞いた僕はある事を思い出したんだ。
「あっ、そうだ! ロルフさんが帰ったらお父さんたちに言っといてねって頼まれてたんだった」
「ん? どうしたんだ、ルディーン」
「ロルフさんというと、あのお金持ちのお爺さんの事よね? 買ったお家の事で、何か頼まれてたの?」
僕が忘れてたって言ったら、それを聞いたお母さんは僕が買ったお家の事だって思ったみたい。
でもね、僕が忘れてたのはお家の事じゃないんだ。
「ううん、違うよ。だってお家の事はみんなストールさんがやってくれるって言ってたもん」
「ストールさん? えっと、その人がルディーンの家の管理をしてくれているというのね」
「なら家の話じゃないとして、あの爺さんから何を頼まれたんだ?」
「あのね、今度みんなでイーノックカウの錬金術ギルドに来て欲しいんだって」
ホントは冒険者ギルドでもいいみたいなんだけど、来てねって言ったのはロルフさんだもん。
ロルフさんは冒険者ギルドに行かないから、錬金術ギルドに来てねって言ってたってお父さんに教えてあげたんだよ。
でもそれを聞いたお父さんは、何の事か解んなかったみたいで不思議そうなお顔をしたんだ。
「えっと、ルディーンの買った家じゃなく、錬金術ギルドに来てくれって言ったのか?」
「うん。みんなで来てねって言ってた」
「錬金術ギルドにわざわざ来て欲しいって事は、そこでも何かあるって事か」
お父さんはね、僕のお話を聞いてムムムってお顔になっちゃったんだよ。
でも、なんでそんなお顔になっちゃったんだろう?
だって僕、錬金術ギルドにみんなで来てねってロルフさんが言ってたのを教えてあげただけなんだもん。
だから頭をこてんって倒しながら、お父さんのお顔を見てたんだよ?
そしたらさ、僕たちのお話を聞いてたお爺さん司祭様がほっほっほって笑い出したんだ。
「どうしたの、司祭様? なんか面白い事、あった?」
「いや、すまんすまん。親子のやり取りが、あまりに微笑ましくてのぉ」
お爺さん司祭様はそう言うとね、なんで錬金術ギルドに行かないとダメなんかをお父さんに教えてくれたんだ。
「そう心配せずともよい。錬金術ギルドに来て欲しいというのはな、せねばならぬ手続きがあるというだけの話だ」
「手続きですか?」
「うむ。ルディーン君が取得した、イーノックカウの居住権の手続きをだ」
僕が取ったイーノックカウの居住権って、家族みんなも取った事になるでしょ?
お爺さん司祭様はね、そん事をお父さんたちに教えてくれたんだ。
「ルディーンが取ったから、俺たちにも居住権が与えられたって事ですか?」
「与えられたというか、そもそも居住権というものは家族単位で取得するものでのぉ。取得が完了した時点で家族そろってどこかのギルドに出向き、そこでギルドカードに登録するのが普通なのだ」
今回はニコラさんたちが借金奴隷ってのにならなくてもいいようにって、すぐに僕のギルドカードに取ったよって書いてもらったでしょ?
だから普通と違って、お父さんたちやお兄ちゃんたち、それにお姉ちゃんたちは後でどっかのギルドに行って書いてもらわないとダメなんだよね。
「今回はルディーン君だけが、先に登録を済ませてしまったからのぉ。だから一度家族全員でイーノックカウと訪れ、その手続きをして欲しいというだけの話なのだよ」
「なるほど、そういう事だったんですね」
お爺さん司祭様のお話を聞いて、なんでイーノックカウに行かないとダメなのかが解ったみたい。
それなら今度みんなで行かないとねって、お父さんとお母さんはお話を始めちゃったんだ。
「おお、そう言えば一つ教えておかねばならぬ事があったな」
「何かあるのですか、司祭様?」
「うむ。その際、街の入口では必ずルディーン君のギルドカードを渡して、居住権の登録をしに来た事を伝えるのだぞ。出なければ、むだに入街料を払う事になってしまうからな」
これを聞いたお父さんとお母さんは、すっごくびっくりしたんだよね。
どうやら僕とおんなじで、お父さんたちも居住権を取ると街に入る時にお金を払わなくっても良くなることを知らなかったみたい。
だから絶対忘れないようにしなきゃって、二人して頷いてたんだ。
「ふむ。話しておかねばならぬ事はこれくらいだろうか。して、いつ頃イーノックカウを訪れるつもりかな?」
「すぐにでもと言いたいところですが、家族全員でとなると流石にそうはいきませんからねぇ」
「先日も家族全員で行ったばかりですし、そうでなくてもパーティーメンバーの事もありますから」
僕はまだ小さいから組んで無いけど、お父さんたちやお兄ちゃんやお姉ちゃんたちも村の人とパーティーを組んでるでしょ?
だからみんな、パーティーを組んでる人たちとお話をしないといつ行けるのか解んないんだって。
「それにルディーンも本来の予定より帰宅が遅れたから、すぐにまたイーノックカウに行く事はできないんですよ」
「何で? 僕、誰ともパーティー組んで無いよ?」
「ルディーンは、お薬を作るお仕事があるでしょ」
お母さんに言われて、そう言えばそろそろお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションを作んなきゃダメな事を思い出したんだよね。
「ルディーンが帰ってくる予定の日に合わせてセリアナの実は仕入れてあったけど、あれって穴を開けたら中の実がすぐに腐ってしまうでしょ? だから村の倉庫に入れっぱなしになってるのよ」
「倉庫は森で獲って来た魔物の素材とかも入れないといけないからな。それを放っておいて、またイーノックカウに行くわけには流石にいかないだろうな」
村のみんなが使うお薬だから、材料のセリアナの実もいっぱい使うんだよね。
それがずーっと村の倉庫の中に入ったまんまだと、やっぱりちょっと邪魔かも?
それにね、いるのは二つのお薬だけじゃないんだって。
「それにおトイレの紙、あれもそろそろ切れそうだって村長さんが言っていたわよ」
「そっか。じゃあ作んないと困っちゃうね」
セリアナの実からは柔らかい繊維がいっぱい採れるから、お薬を作る時に毎回作ってる訳じゃないんだよね。
でも使ってればなくなっちゃうでしょ?
だから次にお薬を作る時は一緒に作ってねって、村長さんから言われてたんだって。
「そんな訳ですので司祭様、すぐにイーノックカウに向かう訳には……」
「よいよい。別に急がなければならない事でもないからのぉ」
僕たちが無事に村に着いたのは、送ってくれた御者さんたちから聞いてロルフさんたちも知ってるでしょ?
だからすぐに行かなくっても、きっとなんかご用事があるんだろうなぁって思ってくれるよってお爺さん司祭様は笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ルディーン君、まだ小さいのに結構仕事が多いんですよね。
今回は二つのポーションとトイレットペーパー作りだけですが、もし魔道具が壊れたりしたらその修理もしないといけないですから。
それに仕事以外でも、ルディーン君がいないと作れない甘味とかもあるし。
これでもしイーノックカウに移り住むなんて言い出したら、村中がパニックになるんじゃないだろうか?